OP室で働く麻酔補助CEの日常

SEARCH

MENU

筋弛緩薬とスガマデクスの使い分け

筋弛緩薬とスガマデクスの使い分け アイキャッチ

はじめに

全身麻酔では、気管挿管と術野の安定のために筋弛緩薬を使い、終了時に拮抗して回復させます。臨床工学技士(CE)は、筋弛緩モニタリングの準備と評価、拮抗薬の選択に関わる情報提供の場面で関係します。

この記事では、ロクロニウムの用量、筋弛緩モニタリング(TOF・PTC)、スガマデクスとネオスチグミンの使い分けを整理します。数値はすべて目安で、実際の投与は筋弛緩モニタの値と添付文書、指示医の判断が優先されます。

ポイント

  • ロクロニウム挿管量は 0.6〜0.9 mg/kg、迅速導入では 0.9〜1.2 mg/kg
  • スガマデクスは「遮断の深さ」で用量を選ぶ(2 / 4 / 16 mg/kg)
  • 拮抗の可否は筋弛緩モニタで判断する。抜管の目安は TOF比 0.9以上
  • ネオスチグミンは深い遮断には効かない。スガマデクスは深くても拮抗できる

確認用の無料ツール

この記事の要点を、4択クイズと「早見表」で確認できます。

CE麻酔補助 一問一答/早見表を開く →

ロクロニウムの用量

  • 気管挿管:0.6〜0.9 mg/kg
  • 迅速導入(RSI):0.9〜1.2 mg/kg(発現を速くするため多め)
  • 術中の追加:0.1〜0.2 mg/kg、または持続投与

作用の発現・持続は、用量、年齢、体温、肝腎機能、併用薬で変わります。

筋弛緩モニタリング

手関節部で尺骨神経を刺激し、母指内転筋の反応をみるのが標準です。

指標 内容 目安
TOFカウント 4連の刺激で触知・記録できる反応の数 0=深い遮断、1〜3=中等度、4=浅い
PTC(ポストテタニックカウント) TOFで反応が出ない深い遮断のときに用いる 1〜2=かなり深い遮断
TOF比(T4/T1) 4番目と1番目の反応の比。回復の指標 抜管の目安は 0.9以上

触知や目視ではTOF比0.9の判定が難しく、加速度筋電などの定量モニタで確認するのが安全です。眼輪筋での評価は横隔膜の回復に近く、抜管可否では母指内転筋より回復を過大評価しやすい点に注意します。

スガマデクス(ブリディオン)の用量

ロクロニウム(およびベクロニウム)を包み込んで不活化します。遮断の深さで用量を選びます。

遮断の深さ 用量の目安
浅い(TOFカウント2以上) 2 mg/kg
深い(PTC 1〜2) 4 mg/kg
ロクロニウム投与直後の即時拮抗 16 mg/kg

投与前に筋弛緩モニタで深さを確認してから用量を決めます。体重は実測値を用います。

ネオスチグミンとの違い

  • ネオスチグミンはコリンエステラーゼ阻害薬で、アセチルコリンを増やして間接的に拮抗します。TOFカウントが回復してから使い、深い遮断には効きません。徐脈・分泌増加を防ぐため抗コリン薬(アトロピンなど)を併用します
  • スガマデクスはロクロニウムを直接結合して除去するため、深い遮断でも短時間で拮抗でき、抗コリン薬は不要です。ただし高価で、下記の注意点があります

ネオスチグミンとスガマデクスの違い

図: ネオスチグミンとスガマデクスの違い

スガマデクス使用時の注意

  • 再投与のロクロニウムが効きにくい期間があります(添付文書に間隔の記載)。緊急で再度筋弛緩が必要なときは別系統の薬を検討します
  • アナフィラキシーの報告があります。投与後の血圧低下・皮膚症状に注意します
  • ホルモン避妊薬の効果を弱める可能性があり、投与後の対応を患者に説明します
  • 重度腎機能障害では使用が推奨されないことがあります

CEが関わること

  • 筋弛緩モニタ(電極位置、キャリブレーション、TOF/PTCモード)の準備と表示の説明
  • 手術体位や電気メスでモニタが乱れたときの切り分け
  • 拮抗のタイミングと、抜管後の再クラーレ化(呼吸抑制の再燃)の観察
  • スガマデクス・ネオスチグミンの在庫と、緊急時の即時拮抗(16 mg/kg)の準備

まとめ

  • ロクロニウム挿管量 0.6〜0.9 mg/kg、RSI 0.9〜1.2 mg/kg
  • 拮抗は筋弛緩モニタで判断。抜管の目安は TOF比 0.9以上
  • スガマデクスは深さで 2/4/16 mg/kg。ネオスチグミンは深い遮断に無効
  • スガマデクスは再投与間隔・アナフィラキシー・避妊薬への影響に注意

数値は目安です。投与量・投与間隔・適応は、筋弛緩モニタの値と添付文書、施設プロトコル、指示医の判断を優先してください。

参考

  • スガマデクス(ブリディオン)およびロクロニウム、ネオスチグミンの添付文書
  • 筋弛緩モニタリングと残存筋弛緩に関する成書・総説