OP室で働く麻酔補助CEの日常

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周術期の緊急対応 ― アナフィラキシーと悪性高熱

周術期の緊急対応 アイキャッチ

はじめに

周術期の急変のうち、アナフィラキシーと悪性高熱症は、早期に気づいて決まった手順で動けるかどうかが結果を左右します。臨床工学技士(CE)は、機器の準備、モニタリング、必要時の体外循環まで、機器面から対応を支えます。

この記事では、この2つの初期徴候と対応の流れを、CEの視点で整理します。数値はすべて目安で、実際の対応は各施設の急変対応プロトコルとガイドライン、指示医の判断が優先されます。

ポイント

  • アナフィラキシーの第一選択はアドレナリン。被疑薬の中止と大量輸液を同時に行う
  • 悪性高熱の最早期徴候は「説明のつかないEtCO2上昇と頻脈」。体温上昇は遅れて出る
  • 悪性高熱の特異的治療はダントロレン。誘因(揮発性麻酔薬とスキサメトニウム)を止める
  • どちらも、薬剤・器材の置き場所と手順を平時に確認しておく

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アナフィラキシー

気づき方

アナフィラキシーの気づき方 ― 皮膚・呼吸・循環に及ぶサイン

図: アナフィラキシーの気づき方 ― 皮膚・呼吸・循環に及ぶサイン

  • 皮膚(紅潮、じんま疹)、循環(血圧低下、頻脈)、呼吸(気道内圧上昇、気管支けいれん、SpO2低下)
  • 全身麻酔中は皮膚症状が隠れやすく、原因不明の血圧低下と気道内圧上昇が最初のサインになることがある
  • 発症は原因薬剤の投与直後〜数分が多い

周術期に多い原因

  • 筋弛緩薬、抗菌薬、クロルヘキシジン(消毒薬)、ラテックス、コロイド、造影剤

対応の流れ

  1. 被疑薬の投与を中止し、応援を要請する。手術・麻酔の継続可否をチームで判断
  2. アドレナリン:重症度に応じて筋注(0.3〜0.5 mg 目安)、循環虚脱では希釈して静注。反応をみて反復
  3. 大量輸液(細胞外液を急速投与)。必要に応じて昇圧薬の持続
  4. 気道確保・純酸素。気管支けいれんには吸入β刺激薬など
  5. 補助的にステロイド、抗ヒスタミン薬(急性期の主役ではない)
  6. 記録:発症時刻、投与薬剤の時系列、血中トリプターゼの採血タイミング(発症後の推奨時間を確認)。後日のアレルギー精査につなげる

CEが関わること

  • 除細動器・輸液加温・急速輸液装置の準備
  • 動脈圧ライン設置の介助、モニタリングの追加
  • 難治性の循環虚脱では体外循環(V-A ECMO)の立ち上げ

悪性高熱症

気づき方(早期ほど重要)

悪性高熱の気づき方 ― 体温上昇・CO2上昇・筋硬直

図: 悪性高熱の気づき方 ― 体温上昇・CO2上昇・筋硬直

  • 説明のつかないEtCO2上昇(分時換気量を増やしても下がりにくい)、頻脈、不整脈
  • 続いて筋硬直(特に咬筋)、体温の急上昇、発汗、皮膚のまだら、コーラ色尿(ミオグロビン尿)
  • 検査値:高二酸化炭素血症、代謝性アシドーシス、高カリウム血症、CK・ミオグロビン上昇

誘因

  • 揮発性吸入麻酔薬(セボフルラン等)とスキサメトニウム(脱分極性筋弛緩薬)
  • 既往・家族歴があれば、全静脈麻酔(TIVA)+非脱分極性筋弛緩薬で管理し、麻酔器から揮発性麻酔薬をなくす

対応の流れ

  1. 誘因薬を直ちに中止し、応援を要請。純酸素・高流量に切り替え、過換気で二酸化炭素を下げる
  2. 可能なら麻酔器の回路・ソーダライムを交換、活性炭フィルタの使用も選択肢
  3. ダントロレンを 1 mg/kg で静注し、症状をみて反復する(総量7 mg/kgまでが目安。溶解に時間がかかるため複数人で準備)
  4. 冷却:体表冷却、冷却輸液、必要なら体腔洗浄
  5. 合併症の管理:高カリウム血症、不整脈、アシドーシス、横紋筋融解に伴う腎保護(尿量確保)、DIC
  6. 落ち着いたらICUで監視。再燃に注意。相談窓口・ヘルプラインの活用

CEが関わること

  • ダントロレンの保管場所・必要本数・溶解手順の把握(緊急時に人手がいる)
  • 麻酔器の回路交換、活性炭フィルタの準備
  • 血液ガス・電解質の頻回測定、体温・尿量モニタリングの準備
  • 血液浄化(高カリウム血症・腎障害)の準備

共通して大切なこと

  • 薬剤(アドレナリン、ダントロレン)と器材の置き場所を平時に確認する
  • 役割分担を決めておく(誰が薬剤、誰が記録、誰が応援要請)
  • シミュレーション・チェックリストで手順を共有しておく

まとめ

  • アナフィラキシー:第一選択アドレナリン + 被疑薬中止 + 大量輸液 + 気道確保
  • 悪性高熱:最早期は EtCO2上昇と頻脈。誘因中止 + ダントロレン + 冷却 + 合併症管理
  • CEは薬剤・器材の準備、モニタリング、体外循環・血液浄化で貢献する
  • 手順・置き場所・役割を平時に共有しておくことが最大の備え

数値・手順は目安です。実際の対応は、各施設の急変対応プロトコルとガイドライン、指示医の判断を優先してください。

参考

  • 公益社団法人 日本麻酔科学会「アナフィラキシーに対する対応プラクティカルガイド」(2021年)
  • 公益社団法人 日本麻酔科学会「悪性高熱症管理ガイドライン」(最新の改定版を参照)
  • ダントロレン、アドレナリンの添付文書