OP室で働く麻酔補助CEの日常

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局所麻酔薬の最大投与量とLAST(局所麻酔薬中毒)

局所麻酔薬の最大投与量とLAST アイキャッチ

はじめに

局所麻酔薬は、硬膜外麻酔、末梢神経ブロック、局所浸潤などで日常的に使われます。安全域は広くありませんが、上限量の管理と、局所麻酔薬中毒(LAST:Local Anesthetic Systemic Toxicity)への備えがあれば、多くは防げる・対応できる合併症です。

この記事では、最大投与量の目安、なぜ上限があるのか、LASTの症状と対応の流れを、臨床工学技士(CE)の視点で整理します。数値はすべて目安で、実際の上限や治療は施設プロトコルとガイドライン、指示医の判断が優先されます。

ポイント

  • 局所麻酔薬には体重あたりの上限がある。アドレナリン添加で吸収が遅れ上限が上がる
  • LASTは前駆症状(口周囲のしびれ・耳鳴り・金属味・多弁)→ けいれん → 循環虚脱と進む
  • 対応の柱は「気道・呼吸・循環の管理」+「20%脂質乳剤」
  • LAST時のACLSは通常と異なる点がある(アドレナリンは少量、バソプレシンは避ける)

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最大投与量の目安(単回・局所浸潤)

薬剤 目安
リドカイン(アドレナリン非添加) 約3 mg/kg(成書により4.5 mg/kgまで)
リドカイン+アドレナリン 約7 mg/kg
ロピバカイン 約3 mg/kg
レボブピバカイン/ブピバカイン 約2 mg/kg
  • 硬膜外・末梢神経ブロックの持続投与は、この単回の上限とは別に、総量と時間で管理します
  • 血流の多い部位(肋間、傍脊椎、頸部など)ほど吸収が速く、血中濃度が上がりやすい
  • 濃度(%)と量(mL)から mg を計算する:1% = 10 mg/mL

なぜ上限があるのか

局所麻酔薬は投与部位から血中へ吸収され、血中濃度が一定を超えると中枢神経・心臓に毒性を示します。

  • アドレナリン添加:局所の血管が収縮して吸収がゆるやかになり、ピーク血中濃度が下がるため、許容量が増えます。ただし指趾・陰茎など終動脈領域では添加を避けます
  • ブピバカインは心毒性が強い:ナトリウムチャネルからの解離が遅く、いったん循環虚脱に至ると蘇生が難しいとされます。ロピバカイン、レボブピバカインは相対的に心毒性が低いとされます

LASTの症状 ― 前駆から循環虚脱まで

  1. 前駆(中枢神経の興奮):口周囲のしびれ、耳鳴り、金属味、めまい、視覚異常、多弁、興奮
  2. けいれん、続いて意識障害・呼吸抑制
  3. 循環(遅れて出ることが多い):徐脈、房室ブロック、QRS幅の延長、心室性不整脈、心停止

血管内に直接入った場合は前駆症状なく急速に進むことがあります。投与中は患者と会話しながら観察し、少しでも異常があれば投与を止めます。

LASTの症状 ― 前駆から循環虚脱まで

図: LASTの症状 ― 前駆から循環虚脱まで

LASTへの対応

日本麻酔科学会の「局所麻酔薬中毒への対応プラクティカルガイド」などに沿って対応します。

  • ただちに投与中止し、応援を呼ぶ。脂質乳剤と蘇生器材の準備
  • 気道確保・純酸素で換気。低酸素・アシドーシスは毒性を悪化させる
  • けいれん:ベンゾジアゼピンを少量。大量のプロポフォールは循環抑制を助長するため避ける
  • 20%脂質乳剤(lipid rescue):初回 約1.5 mL/kg を約1分で静注し、0.25 mL/kg/min で持続。改善なければ再投与し持続量を増やす(総量の目安あり。ガイドラインの用量に従う)
  • 心停止:ただちにACLS。ただしアドレナリンは少量(例:≦1 µg/kg)から、バソプレシンは避ける、局所麻酔薬・Ⅰ群/Ⅲ群抗不整脈薬・カルシウム拮抗薬・β遮断薬は使わない。難治性では体外循環(V-A ECMO)を考慮

予防

  • 投与前に上限量を計算し、共有する
  • 分割投与(3〜5 mLごと)と、こまめな吸引確認、少量のテストドース
  • 高齢・低体重・肝腎機能低下・心疾患では減量を検討
  • ブロック時は蘇生器材と脂質乳剤をすぐ使える場所に置く

CEが関わること

  • 脂質乳剤・蘇生器材・除細動器の配置と点検、投与ルートの確保の介助
  • モニタリング(心電図でのQRS幅、SpO2、必要ならAライン)の準備
  • 体外循環が必要になった場合のECMO立ち上げ
  • 使用量の記録と、施設プロトコルの周知

まとめ

  • 局所麻酔薬は体重あたりの上限がある。投与前に計算し共有する
  • アドレナリン添加は吸収を遅らせ上限を上げるが、終動脈領域では使わない
  • LASTは前駆症状 → けいれん → 循環虚脱。会話しながら観察する
  • 対応は「気道・換気」+「20%脂質乳剤」。ACLSは通常と異なる点がある

数値は目安です。上限量・脂質乳剤の用量・蘇生の手順は、ガイドラインと施設プロトコル、指示医の判断を優先してください。

参考

  • 公益社団法人 日本麻酔科学会「局所麻酔薬中毒への対応プラクティカルガイド」(2017年6月制定)
  • ASRA(米国区域麻酔学会)LAST チェックリスト
  • 各局所麻酔薬(リドカイン、ロピバカイン、レボブピバカイン、ブピバカイン)の添付文書