鎮静・鎮痛薬の基本 ― プロポフォール・レミフェンタニル・フェンタニル

はじめに
全静脈麻酔(TIVA)や鎮静では、プロポフォール(鎮静)とオピオイド(鎮痛)を組み合わせて使います。臨床工学技士(CE)は、シリンジポンプの設定、TCI(目標制御注入)の運用、薬剤の希釈と配置に関わります。
この記事では、代表的な鎮静・鎮痛薬の投与量の目安、代謝の特徴、注意点を整理します。数値はすべて目安で、実際の投与は患者の状態と添付文書、指示医の判断が優先されます。
ポイント
- プロポフォール導入は 1〜2.5 mg/kg(高齢者は減量)。基剤は大豆油・卵黄レシチン
- レミフェンタニルはエステラーゼで代謝され、投与時間が長くても効果消失が速い
- レミフェンタニル中止で鎮痛も速やかに消える。覚醒前に別の鎮痛を用意する
- フェンタニルは1アンプル 0.1 mg/2 mL。単位(mgとµg)の取り違えに注意
プロポフォール
- 導入:1〜2.5 mg/kg。高齢者・循環不安定・脱水では減量し、ゆっくり投与する
- 維持:4〜10 mg/kg/hr、またはTCIで効果部位濃度 2〜4 µg/mL 目安
- 代謝:肝代謝が主だが肝外代謝もあり、比較的速やかに覚醒する
- 注意点
- 基剤が脂肪乳剤(大豆油・卵黄レシチン)。重度の卵・大豆アレルギーでは慎重投与
- 投与時痛:太い静脈を選ぶ、リドカインを前投与する、などの対策
- 血圧低下・徐脈・呼吸抑制。急速投与で顕著になる
- 長時間・高用量ではプロポフォール注入症候群(PRIS)に注意(代謝性アシドーシス、横紋筋融解、心機能低下)
- 微生物が繁殖しやすい製剤のため、開封後は時間管理し、清潔に扱う
レミフェンタニル
- 代謝:血中・組織の非特異的エステラーゼで加水分解される。腎・肝機能の影響を受けにくく、投与時間が長くなっても効果消失時間がほぼ一定
- 希釈:添付文書上の標準は100 µg/mL(生理食塩液または5%ブドウ糖液で希釈。許容範囲は20〜250 µg/mL)
- 投与量:導入時は通常0.5 µg/kg/min(挿管など強い刺激が予想される場合は1.0 µg/kg/min)、維持時は通常0.25 µg/kg/min。上限は2.0 µg/kg/minを超えない
- 注意点
- 中止すると鎮痛も速やかに消える。覚醒前にフェンタニルや区域麻酔など別の鎮痛手段を用意する
- 急速投与・高用量で徐脈、筋硬直(胸壁硬直で換気困難になることがある)
- 高用量・長時間で術後の痛覚過敏(オピオイド誘発性痛覚過敏)の報告
- 単独ルートまたは確実な側管から。ライン内のデッドスペースでボーラスや中断が起こりやすい
フェンタニル
- 規格:1 アンプル = 0.1 mg/2 mL(0.05 mg/1 mL の製剤もある)
- 投与量:単回 1〜2 µg/kg 目安。作用発現は数分、持続は30〜60分程度
- 注意点
- 単位の取り違え(mg と µg)が重大な過量につながる。指示と投与量を声に出して確認
- 遅発性の呼吸抑制、悪心・嘔吐、腸管蠕動の低下
- 麻薬。管理・記録・残液処理は施設の規程どおりに

図: プロポフォール・レミフェンタニル・フェンタニルの使い分け
レミマゾラム(参考)
- ベンゾジアゼピン系の鎮静薬で、フルマゼニルで拮抗できる
- 循環抑制が比較的少なく、誘発電位モニタリングへの影響が少ないとの報告があり、TIVAの選択肢になる
CEが関わること
- シリンジポンプ・TCIポンプの設定(薬剤名、濃度、体重、目標濃度)とアラーム
- 複数ポンプの配置、ルートの取り回し、配合変化と単独投与の要否
- シリンジ交換時の投与途切れ・ボーラスによる血行動態変化の観察
- 麻薬の受け払い・残液処理の記録の確認
- 覚醒時、レミフェンタニル中止後の鎮痛の切れ目や再鎮静・再呼吸抑制の観察
まとめ
- プロポフォール導入 1〜2.5 mg/kg。基剤アレルギーと投与時痛、PRISに注意
- レミフェンタニルはエステラーゼ代謝で切れが速い。覚醒前に別の鎮痛を用意
- フェンタニルは 0.1 mg/2 mL。単位の取り違えを防ぐ
- ポンプ設定と薬剤濃度のダブルチェックがCEの要点
数値は目安です。投与量・希釈・目標濃度は、各薬剤の添付文書と施設プロトコル、指示医の判断を優先してください。
参考
- プロポフォール、レミフェンタニル、フェンタニル、レミマゾラムの添付文書(レミフェンタニルの希釈・投与量はレミフェンタニル静注用「第一三共」添付文書(PMDA)で2026-09-26に確認)
- 全静脈麻酔(TIVA)・TCIに関する成書・総説





