OP室で働く麻酔補助CEの日常

SEARCH

MENU

麻酔補助における臨床工学技士(CE)の役割とは?

手術室で医師の負担を減らしながら安全性を保つ「タスクシフト/シェア」。その担い手の一つが臨床工学技士(CE)による麻酔補助です。この記事では、CEが麻酔補助に加わると現場がどう変わるのか、そして手術室で実際に起こるトラブルにCEがどう関わるのかを、事例ベースで整理します。

ポイント

  • 2021年10月施行の法改正で、CEの業務に手術室での麻酔器を用いた人工呼吸などの行為が加わった
  • CEが加わることで「始業点検の標準化」「機器トラブルの初動短縮」「麻酔科医が患者管理に集中できる時間の確保」が進む
  • トラブル対応では「患者の変化か、機器・回路の問題か」を切り分けられることがCEの最大の価値
  • 判断と指示は麻酔科医。CEはそれを機器の面から支える

CEの麻酔補助 ― 4つの業務領域

1. 麻酔器の始業点検・セッティング

  • 電源・医療ガス(O2・空気・N2O)供給と配管接続の確認
  • リークテスト、フローセンサー・気化器の点検
  • 換気モード・一回換気量・気道内圧・アラーム上下限の初期設定
  • CO2吸収剤(ソーダライム)の残量・変色の確認

2. モニター・周辺機器の準備

  • 心電図・SpO2・観血的動脈圧・EtCO2・体温・筋弛緩モニタの接続と波形確認
  • シリンジポンプ・輸液ポンプの流量設定、加温装置・急速輸液装置の準備
  • 必要に応じて神経刺激装置やBISなどの麻酔深度モニタ

各モニタの読み方とトラブル対応は周術期モニタリング総まとめにまとめています。

3. 麻酔導入・覚醒時のサポート

  • 導入時:マスク換気の補助、挿管物品の受け渡し、バイタルの読み上げ
  • 維持中:換気設定の微調整、モニタ波形・数値の変化の共有
  • 覚醒時:自発呼吸の確認、抜管準備、再挿管に備えた物品確認

4. トラブル対応・緊急時支援

  • 回路リーク、センサー不良、アラーム原因の切り分け(機器由来か患者由来か)
  • 大量出血時の急速輸液・加温、除細動器のスタンバイ
  • 悪性高熱症・アナフィラキシーなどでの機器面の準備と対応

CEが加わることで改善すること

CEが麻酔補助に入る意味は「人手が増える」ことではなく、機器を専門とする視点がチームに常時あることです。具体的には次のような変化が期待できます。

始業点検が標準化され、記録として残る

麻酔器の始業点検を担当者ごとの「なんとなく」で済ませず、手順に沿って毎回同じ精度で実施し、チェックリストとして残せます。リークや一方向弁の不具合、気化器の取り付け不良といった、導入前に潰せる問題を確実に拾えます。

機器トラブルの初動が短くなる

アラームが鳴ったとき、原因が「患者」なのか「回路・センサー・設定」なのかを、麻酔科医が患者の対応をしている間にCEが並行して切り分けられます。原因の当たりが早くつくぶん、対応開始までの時間が短くなります。

麻酔科医が患者管理に集中できる

モニタの再校正、ポンプの載せ替え、加温装置の準備、機器の配置換えといった手技をCEが引き受けることで、麻酔科医は循環・呼吸・鎮静の管理に時間を使えます。これはタスクシフト/シェアが本来ねらっている効果です。

機器の選定・教育・保守に知見が還る

麻酔補助に入るCEは、日々の点検や更新計画も担っています。現場で「使いにくい」「トラブルが多い」と感じた点を、機器選定や院内研修、予防保全の内容に反映しやすくなります。

時間外・緊急症例での機器サポート

夜間・休日の緊急手術でも、機器の準備やトラブル対応をCEが支えられる体制をつくりやすくなります。

手術室でよくあるトラブルと、CEの関わり方

いずれも「まず生体情報(脈拍・血圧・SpO2・EtCO2)を同時に確認し、気道・回路の状態を見る」が共通の初動です。そのうえで機器側の切り分けをCEが担います。

換気できない・気道内圧が急上昇/急低下

  • 考えられる原因:回路の外れ・接続ミス、チューブの屈曲・片肺挿管、フィルタやチューブの閉塞、APL弁の閉め忘れ、カフのトラブル
  • CEの動き:回路の全接続を手早く確認、用手換気に切り替えてコンプライアンスを体感、フィルタ・チューブを疑って交換、麻酔器のリーク/閉塞アラームの内容を読む

カプノグラフィ(EtCO2)波形の異常

  • 食道挿管では波形が出ない、回路リークや循環虚脱ではEtCO2が急低下、ソーダライム消耗ではベースラインが上がる
  • CEの動き:波形の「形」と数値の「高さ」を分けて評価し、機器要因(回路・弁・センサー)か病態要因かを麻酔科医と共有
  • 詳しくはカプノグラフィ(EtCO2)波形異常の読み方

SpO2が表示されない・急に下がった

観血的動脈圧の波形がなまる・数値が合わない

  • オーバーダンピング(気泡・血栓・ライン屈曲)、アンダーダンピング、ゼロ点校正のズレ、トランスデューサの高さ不良
  • CEの動き:スクエアウェーブテストで系のダンピングを確認、ゼロ点と高さを取り直す、ラインをフラッシュして気泡・屈曲を除く
  • 詳しくは観血的動脈圧(Aライン)モニタリング

心電図モニタのノイズで不整脈判定ができない

輸液・シリンジポンプの閉塞、加温不足による低体温

  • 三方活栓の向き、ライン閉塞、薬剤の結晶化、加温装置の未使用や設定不足
  • CEの動き:閉塞アラームの圧を確認してライン全体をたどる、加温装置・輸液加温の準備と稼働確認、体温トレンドの共有

ペースメーカ・ICD 装着患者での電気メス使用

  • オーバーセンシングによるペーシング抑制、モードリセット、ICDの不適切作動
  • CEの動き:術前の設定変更(非同期モード等)やマグネット対応の段取り、術中のモニタリング、術後の設定確認とチェック
  • 詳しくは周術期のペースメーカ管理

大量出血・急速輸血

悪性高熱症を疑う場面

  • サイン:EtCO2の持続上昇、原因の説明がつかない頻脈、体温上昇、筋硬直
  • CEの動き(機器面):麻酔器の揮発性麻酔薬を止め、可能なら新品の回路・バッグへ交換、活性炭フィルタの装着、高流量での洗い流し、体表・輸液の冷却準備。判断と薬剤(ダントロレン)投与は麻酔科医が行う

CEならではの強み

麻酔器・人工呼吸器・輸液ポンプ・モニタは、いずれもCEが普段から保守・点検している機器です。「この波形は患者の変化か、それとも回路やセンサーの問題か」を切り分けられること ― これが麻酔補助でのCEの価値の中心です。

まとめ

  • 2021年10月施行の法改正でCEの麻酔補助が制度上も位置づけられた
  • 業務は「点検・準備」「モニタリング」「導入・覚醒の補助」「トラブル対応」の4領域
  • CEが加わることで、始業点検の標準化、トラブル初動の短縮、麻酔科医が患者管理に集中できる時間の確保が進む
  • トラブル対応の核心は「患者由来か、機器・回路由来か」の切り分け
  • 判断と指示は麻酔科医。CEはそれを機器の面から支える

CEとして麻酔補助にどう踏み出したかは麻酔補助CEとしての第一歩に、領域全体は麻酔補助総まとめにまとめています。