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人工呼吸のグラフィックモニタとPAV|波形・換気モード・呼吸努力の見方

人工呼吸グラフィックモニタ アイキャッチ

はじめに

人工呼吸のグラフィックモニタは、設定した補助が患者にどう届き、呼吸がどう返ってきたかを確かめる画面です。気道内圧だけで判断せず、気流と換気量を同じ時間軸で見ることが基本です。

麻酔器の始業点検で回路の準備ができても、患者接続後の抵抗や呼吸努力は変化します。この記事では基本波形と換気モードを整理したうえで、提供された学習メモを基にPAVの比例補助を考えます。

この記事でわかること

  • 圧・気流・換気量を吸気と呼気に分けて読む
  • VCV・PCV・PSVで何を設定し、何を観察するかを区別する
  • PAVの呼吸努力に応じた補助と、表示を読む際の確認点を理解する

気道内圧・気流・換気量波形の基本

画面を見る前に、モード名、縦軸の単位、横軸の時間、表示の拡大率を確認します。流量の正負や並び方は機種によるため、形だけを覚えて別の装置へ当てはめないことが大切です。

波形主に見るところ組み合わせて考えること
気道内圧吸気の立ち上がり、最高点、呼気の基線回路・気道の抵抗、肺や胸郭の硬さ、患者努力
気流吸気の流れ方、呼気流の戻り吸気と呼気の切替、呼出が続いたまま次の吸気に入っていないか
換気量吸気で増える量と呼気で戻る経過設定量と実測量の違い、リークや測定条件
図:一定流量の容量制御を例にした波形。縦の区切りは吸気から呼気への切替です。すべてのモードで同じ形にはなりません。
図:一定流量の容量制御を例にした波形。縦の区切りは吸気から呼気への切替です。すべてのモードで同じ形にはなりません。

呼気流が基線へ戻る前に次の吸気が始まるときは、呼出が完了していない可能性を考えます。ただし波形だけで閉じ込められた空気量や圧を定量できるわけではありません。換気条件と患者状態を添えて相談します。

吸気と呼気の換気量に差があれば、回路や気道周囲のリーク、センサーの条件を確認します。単発の差より持続性と変化の時点に注目し、回路交換や体位変更の前後を比較すると切り分けに役立ちます。

基本モードの違い:設定値と実測値を分ける

モード基本的な制御・補助優先して追う変化
VCV(容量制御換気)換気量を設定し送気する同じ量を入れるための気道内圧
PCV(圧制御換気)吸気の圧と時間を設定する実際に得られた換気量
PSV(圧支持換気)患者の吸気を設定した補助圧で支える呼吸数、換気量、努力と補助の一致

VCVでは、同じ換気量でも抵抗や肺・胸郭の硬さが変われば必要な圧が変わります。PCVでは同じ圧設定を保っていても換気量が変わり得ます。設定した値だけを見て「換気は変わっていない」と判断しないようにします。

図:基本モードで重点的に見る項目。実機には複合的な制御もあり、名称と動作の対応は機種によります。
図:基本モードで重点的に見る項目。実機には複合的な制御もあり、名称と動作の対応は機種によります。

PSVでは患者の吸気を検出して補助が始まり、一般に吸気流量の減少を利用して呼気へ切り替わります。開始の検出条件や切替条件は機種によります。補助圧が同じでも、患者努力や呼吸器系の状態が変われば換気量は一定ではありません。

補助の主体で見るモードの分類:A/C・SIMV・SPONT・PRVC

VCV・PCV・PSVを「何を設定して補助するか」で整理したら、次は「何をきっかけに呼吸が始まり、どの呼吸に強制換気が入り、最低回数をどう保つか」を見ます。A/C・SIMV・SPONTは、この呼吸の組み合わせを理解するための分類です。一方、PRVCは換気量を目標に送気圧を調整する方法であり、この分類と同じ軸の選択肢として並べないことが大切です。

A/C:患者がトリガーしても強制換気

A/C(アシストコントロール)では、すべての呼吸が強制換気で補助されます。Assistは患者の吸気努力をきっかけにする患者トリガー、Controlは時間をきっかけにする時間トリガーです。どちらでも強制換気が入り、設定した呼吸回数を下回らない仕組みです。「患者が吸おうとしたから、強制換気ではない」とは限りません。

SIMV:同期した強制換気と、その間の自発呼吸

SIMV(同期式間欠的強制換気)は最低強制換気回数を保証しながら、自発呼吸を組み合わせます。トリガーウィンドウと呼ばれる時間帯の吸気努力には、同期した強制換気で応答します。ウィンドウ外の自発呼吸は通常、設定した圧支持(PSV)で補助します。A/Cとの違いは、患者の努力に対して毎回強制換気が入るわけではない点です。

SPONT:自発呼吸が主体

SPONT(自発呼吸モード)は、呼吸の開始・終了・換気量・流速を基本的に患者側が決めるモードです。人工呼吸器は圧支持(PS)などで補助します。A/CやSIMVのように最低強制換気回数を確保する分類ではなく、自発呼吸を主体として読むのがポイントです。実機の動作は、名称だけでなく使用機種の説明書と設定を確認します。

A/Cは時間・患者トリガーとも強制換気。SIMVはトリガーウィンドウ内で強制換気、外で通常PSV。SPONTは自発呼吸を圧支持で補助した例。
図:トリガーへの応答を比べる気道内圧の模式図。高さ・幅・間隔は設定値や実測値を表しません。波形の形だけでモードを判別する図ではありません。

PRVC:換気量を目標に、送気圧を調整する

PRVC(Pressure-Regulated Volume Control:圧規定量規定換気)は、一回換気量の設定と圧力制限を組み合わせたハイブリッドモードです。基本は「適応型ターゲットスキームを持つ従圧式」で、設定した換気量に近づけるよう、人工呼吸器が毎呼吸ごとに送気圧を自動調整します。換気量を設定することと、送気圧が一定であることを混同しないようにします。機種により呼称や実装が異なるため、表示名と動作の対応を確認します。

PRVCの模式図。一回換気量を設定し、得られた換気量を評価して、次の呼吸の送気圧を自動調整する。
図:PRVCの調整の考え方。送気圧が変わる一例であり、圧が必ず上がり続けることや、特定の調整幅・アルゴリズムを示すものではありません。
A/C・SIMV・SPONTと、別軸のPRVCの整理
モード保証される最低回数自発呼吸への対応設定するもの(分類上の要点)
A/C設定した呼吸回数患者トリガーでも強制換気呼吸回数と、選択した制御方式に応じた換気量・圧など
SIMV設定した強制換気回数ウィンドウ内は同期した強制換気、外は通常PSV強制換気回数、強制換気の条件、自発呼吸に対する補助圧
SPONT自発呼吸主体で、最低強制換気回数を保証する分類ではない患者が主体。PSなどで補助圧支持を使う場合は補助圧など
PRVC(調整方法の軸)PRVCの調整原理だけでは決まらない。実機の呼吸方式・設定を確認呼吸の組み合わせとは分けて確認目標とする一回換気量と圧力制限に関する条件。送気圧は自動調整

表は設定項目の全一覧ではなく、分類を理解するための整理です。「A/C・SIMV・SPONTは呼吸の組み合わせ、PRVCは送気圧の調整方法」と分けると、モード名と実際の動作を結び付けやすくなります。

後の節で扱うPAVは自発呼吸を温存するモードの一例であり、SPONTやSIMVも自発呼吸を残す考え方につながりますが、補助の仕組みはそれぞれ異なります。

波形が変わったときの読み方と対応

最高気道内圧が上がっても、それだけでは原因を区別できません。流れがある間の圧には抵抗の影響が含まれます。吸気休止で得るプラトー圧との比較は役立ちますが、自発努力やリークなどで解釈が難しくなるため、測定条件を確認して担当医と評価します。

  1. 患者の胸郭運動、呼吸努力、酸素化とアラームを確認し、急変なら直ちに担当医へ共有する。
  2. モード・設定・実測値を確認し、変化前後の波形を保存する。
  3. 回路の外れ、屈曲、水の貯留、接続、センサーの状態を目視する。
  4. 吸気開始と患者努力、呼気への切替が合っているかを見る。必要な評価と設定調整を担当医へ相談する。

たとえば圧の上昇と換気量の低下が同時に見えたら、患者の状態と気道・回路を優先して確認します。波形を整える目的だけで設定を変更せず、どの所見が改善したかまで追います。画面の保存にはモード名と変更時刻を含めると共有しやすくなります。

自発呼吸を温存する考え方とPAV

提供メモでは、自発呼吸努力を残す考え方と、呼吸筋を使わないことへの懸念が述べられています。本稿では自発呼吸温存を考えるモードの一例として、PAV(Proportional Assist Ventilation:比例した補助換気)を取り上げます。メモの趣旨を、すべての患者で鎮静を中止する指示としては扱いません。

PAVの核は、自発呼吸が強いときは大きいサポート、弱いときは小さいサポートになることです。患者の呼吸に合わせて補助が変化する、と覚えます。圧の高さだけを見て補助が一定かどうか判断するのではなく、呼吸努力との関係を考えます。

呼吸筋発生圧力の概念式とサポート率

提供メモでは、気道抵抗に打ち勝つ力を「R × フロー」、肺・胸郭の弾性抵抗に打ち勝つ力を「E × 換気量」と整理しています。Rはレジスタンス、Eはエラスタンスを表します。

Pmus = R × フロー + E × 換気量

これは提供メモにある呼吸筋発生圧力の概念式です。ここでは負荷の内訳を理解するために示し、人工呼吸中の実測値をそのまま代入して患者努力を求める計算式としては使いません。メモには式の適用条件や装置の計算手順が記載されていないためです。

図:PAVの比例補助と提供メモの概念式。棒は補助の大小を示すだけで、実機画面や設定率を再現していません。
図:PAVの比例補助と提供メモの概念式。棒は補助の大小を示すだけで、実機画面や設定率を再現していません。

提供メモは、抵抗や硬さを基に呼吸筋の力をリアルタイムに捉えられること、サポート率(%Supp)の設定を助ける呼吸仕事量バーグラフを表示できることを説明しています。何を測定・推定しているか、バーがどの範囲を示すかは、このメモだけでは確定できません。

そのため、ここでは具体的なサポート率の推奨値やバーの正常範囲を示しません。機種による表示の意味と操作方法を取扱説明書で確認し、設定の目標は施設プロトコルと担当医の方針に合わせます。バーの長さだけを目標に設定する説明にも踏み込みません。

CEが確認すること

  • 画面の前提:モード、軸、単位、時間幅、設定値と実測値の区別を確認する。
  • 波形の整合性:圧・気流・換気量を同時に見て、患者の胸郭運動や努力と照合する。
  • 測定と回路:センサー、接続、屈曲、水の貯留、リークの可能性を確認する。
  • PAVの表示:%Suppと呼吸仕事量表示の意味は機種の説明書に照合する。提供メモにない算出法や適正範囲を推測しない。
  • 情報共有:変更前後の設定、波形、患者の反応を残し、設定調整は担当医と進める。

始業点検の結果は接続後の換気を保証するものではありません。回路操作後や体位変更後にも実測値を見直します。「アラームが止まった」だけで完了にせず、換気と患者状態の両方がどうなったかを共有します。

よくある質問

Q. 気道内圧が高ければ肺が硬いのですか?

A. 気道や回路の抵抗、患者努力なども関わります。気流・換気量と測定条件を合わせて確認します。

Q. PCVなら換気量も一定ですか?

A. 一定とは限りません。抵抗、硬さ、患者努力の変化に応じて実測換気量を追います。

Q. PAVのサポート率はどの値から始めますか?

A. 提供メモに推奨値はありません。機種の手順と施設プロトコルに従って担当医が設定します。

Q. PAVの棒グラフはそのまま呼吸筋力ですか?

A. 提供メモでは呼吸仕事量の表示とされています。測定・推定の方法と表示対象は実機の説明書で確認します。

まとめ

  • 圧・気流・換気量を同じ時刻で読む。
  • VCVでは圧、PCVでは実測換気量の変化を追う。
  • PSVでは患者努力と補助開始・終了の関係も見る。
  • PAVは患者の呼吸努力に合わせて補助が変わる。
  • %Suppや仕事量表示は機種の定義を確認し、具体的な設定値を推測しない。

参考・照合対象:基本モードと波形はPrinciples and Practice of Mechanical Ventilation、Ventilator Waveform Interpretation。PAVはユーザー提供「人工呼吸について」の書き起こしに基づきます。記述別の確認事項はCITATIONS_TO_VERIFY.mdに記載しています。

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