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腹腔鏡手術のCO2気腹管理|皮下気腫の確認とカフリークテスト

腹腔鏡CO2気腹管理 アイキャッチ

はじめに

腹腔鏡・ロボット支援手術でEtCO2が上がったら、換気設定だけでなく気腹によるCO2吸収と、腹膜外へのガス漏出を確認します。換気を増やしても上昇が続く場合は、皮下気腫を含めた原因の見直しが必要です。

本稿では成人の気腹管理を中心に、術中の確認から抜管前の評価までを整理します。皮下気腫と気道浮腫は同じ病態ではありません。カフリークテストは、必要な症例で気道の通りを評価する補助として独立して扱います。

この記事でわかること

  • CO2吸収と換気の変化を分けて考える方法
  • 皮下気腫を疑ったときの確認・共有の順序
  • カフリークテストでわかることと限界

腹腔鏡手術中のCO2管理:吸収と換気をセットで見る

気腹に用いたCO2は腹膜などから血液へ吸収され、肺から排出されます。吸収量に対して肺胞換気が不足すれば、動脈血CO2が上昇します。一方、気腹は横隔膜を押し上げ、肺・胸郭を膨らみにくくします。同じ設定でも実測換気量や気道内圧が変わり得ます。[参考1]

EtCO2(呼気終末二酸化炭素分圧)は推移を見る手掛かりですが、PaCO2(動脈血二酸化炭素分圧)と一致するとは限りません。上昇が持続する、循環が不安定、臨床所見と合わない場合には、担当医と血液ガスによるPaCO2・pHの確認を相談します。

高炭酸ガス血症は呼吸性アシドーシスを生じ、頻脈や不整脈などを伴うことがあります。気腹自体の循環への影響も重なるため、血圧・心電図・酸素化を合わせて評価します。[参考2]

CO2吸収の増加と気腹による換気条件の変化を並行して確認する概念図
図1:CO2の流入側と排出側を一緒に確認する。
  1. 気腹前のEtCO2、実測換気量、気道内圧と比較し、気腹開始・体位変更との時間関係を確認する。
  2. 担当医の方針に沿って呼吸回数などを調整し、実測分時換気量が増えたかを見る。一回換気量を無理に増やさず、気道内圧と呼出時間も確認する。
  3. 調整後の推移を再評価する。改善しなければ、換気系の問題と気腹側のCO2負荷を並行して調べる。

覚え方は「入るCO2・出せる換気・漏れる場所」。一律の換気設定や気腹圧ではなく、患者状態と術野を踏まえてチームで調整します。

気腹による皮下気腫:原因と広がり方

ポート周囲や腹膜外へCO2が入り、組織の隙間に広がると皮下気腫が生じます。高い気腹圧、長時間の気腹、ポート数や周囲組織への負荷、ポートの位置・密着状態が関連します。後腹膜アプローチでは、腹腔内とは異なる組織面へガスが入る点にも注意します。[参考2]

腹壁から胸部・頸部の皮下へ広がるほか、深部のガスが後腹膜から縦隔・頸部へ進展することがあります。全例が同じ順に進むわけではなく、皮膚の腫れだけで深部の範囲は判断できません。

左に腹壁から胸部と頸部の皮下へ、右に後腹膜から縦隔と頸部へガスが進展し得る経路を示す人体模式図
図2:組織内を広がる経路の模式図。矢印は進展の可能性を示し、順序・速さ・重症度を表さない。皮下気腫と気道浮腫は別に評価する。
見つけたい変化考えること次の確認
触れると雪を握るような感触(握雪感)、腫脹皮下へのガス貯留腹壁・胸部・頸部の範囲と拡大
換気を増やしてもEtCO2上昇が持続組織からのCO2吸収増加、換気不足など実測換気量、気腹条件、血液ガス
酸素化低下、気道内圧上昇、血圧低下気胸などの合併症も鑑別直ちに担当医へ共有し患者評価

これらは診断を確定する組合せではありません。EtCO2上昇だけで皮下気腫と決めず、触診所見や手術操作と照合します。

皮下気腫を疑ったときの確認と対応

  1. 患者の安全を先に確認する。酸素化・血圧・心電図・換気を確認。急変があれば直ちに麻酔科医・術者へ伝え、以下を順番待ちにせず並行して進めます。
  2. 換気・測定経路を確認する。回路の外れや屈曲、気管チューブ、サンプリングライン、吸気CO2や吸収剤の状態を確認します。
  3. 気腹側と体表を確認する。清潔野に配慮して術者とポート周囲を確認し、胸部・頸部への腫脹や握雪感の拡大を共有します。気腹圧・流量の表示、気腹時間、直前の操作も記録します。
  4. 原因への介入を相談する。術者はポート位置や漏出を確認し、麻酔科医と気腹圧低減・一時中止・脱気の必要性を検討します。重症度に応じて気胸・縦隔気腫の評価や画像検査を進めます。
  5. 介入後も追う。EtCO2、換気、循環と皮下所見を再確認。脱気後も組織からCO2吸収が続くことがあるため、改善を確認して引き継ぎます。

例えば「気腹中にEtCO2が上昇し、換気調整後も上がり、頸部に握雪感がある」なら、上昇の推移と皮下所見をセットで報告します。換気を増やし続けるだけで漏出の確認を遅らせないことが要点です。[参考2]

カフリークテスト:抜管前の気道評価を補う

カフリークテストは、気管チューブのカフを脱気し、チューブ周囲を通る空気の漏れを調べる方法です。気道浮腫などによる上気道狭窄のリスク評価を補助します。皮下気腫を診断する検査ではなく、頸部に皮下気腫があるだけで浮腫があるとは判断できません。

長時間の頭低位や挿管時の損傷など、気道への影響が懸念される状況では担当医が適応を検討します。すべての気腹症例に一律に行う検査とはしません。参考の成人人工呼吸離脱ガイドラインは主に集中治療領域を対象としており、短時間の術後抜管へそのまま当てはめないことが必要です。[参考3]

  1. 覚醒、呼吸、酸素化、筋弛緩からの回復など抜管の全身条件を評価し、必要時に口腔・気管内の分泌物を吸引します。
  2. 施設手順に沿ってカフ脱気前後の漏れを比較します。漏れ音をみる定性的な方法と、換気量の変化を測る定量的な方法があります。換気条件と測定方法を記録します。
  3. 評価中に換気や酸素化が悪化すれば中止し、換気を確保します。挿管を継続する場合はカフを再膨張し、カフ圧・換気・アラームを確認します。
  4. 結果を他の気道所見と合わせ、抜管時期、追加評価、再挿管への備えを担当医が判断します。
カフリークテストの準備、脱気前後の比較、カフと換気の復帰、総合判断の手順
図3:施設手順で実施する評価の概要。カフの復帰確認までを含める。

リークが少ない・ない場合でも浮腫確定ではなく、リークがあっても安全な抜管の保証にはなりません。チューブの太さ、分泌物、換気条件も結果に影響します。定量値の閾値は方法・対象集団によって異なるため、本稿では一律の合格値を設けません。[参考4] [参考5]

CEが確認すること

場面確認・共有する情報
気腹開始・条件変更時気腹装置の設定と表示、アラーム、開始時刻、体位。変更前後の換気実測値とEtCO2
EtCO2上昇時回路・測定経路、実測分時換気量、気道内圧、対応後の推移と皮下所見
抜管前・申し送り脱気後の推移、皮下気腫の範囲、気道評価、カフ復帰、必要機器と再挿管への備え

CEは機器情報と患者の変化を同じ時系列で結びます。「いつ、何を変更し、どう変わったか」を共有し、換気設定や気腹条件の変更は担当医・術者の方針と施設の業務手順に沿って行います。

よくある質問

Q. EtCO2上昇は気腹中なら正常ですか?

吸収による上昇は起こり得ますが、持続する上昇を放置しません。換気、漏出、循環と調整後の反応を確認します。

Q. 皮下気腫は換気を増やせば解決しますか?

換気はCO2排出を助けますが、漏出の原因は残り得ます。ポートや気腹条件を見直し、合併症も評価します。

Q. 脱気すればすぐ抜管できますか?

脱気だけでは決まりません。CO2の推移、全身の抜管条件、頸部を含む気道所見を確認します。

Q. カフリークがあれば気道浮腫を否定できますか?

否定できません。検査は補助であり、抜管後の観察と再挿管への備えも必要です。

まとめ

  • CO2気腹では吸収増加と換気条件の変化を同時に見る。
  • 改善しないEtCO2上昇では、換気系とガス漏出を並行して確認する。
  • 皮下気腫は範囲と推移を共有し、呼吸・循環悪化時は合併症を評価する。
  • カフリークテストは気道評価の補助であり、皮下気腫の診断や抜管許可の検査ではない。
  • CEは気腹条件、換気実測値、介入後の変化を時系列でつなぐ。

参考

  1. Effects of pneumoperitoneal pressure and position changes on respiratory mechanics during laparoscopic colectomy
  2. Subcutaneous Emphysema—Beyond the Pneumoperitoneum
  3. ATS/CHEST成人人工呼吸離脱ガイドライン(カフリークテスト等)
  4. The cuff leak test to predict failure of tracheal extubation for laryngeal edema
  5. A novel technique for assessment of post-extubation airway obstruction can successfully replace the conventional cuff leak test: a pilot study