OP室で働く麻酔補助CEの日常

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声門上器具(LMA・i-gel)の基本 ― 種類・入れ方・カフ圧とトラブル対応

声門上器具(LMA)の基本 アイキャッチ

はじめに

声門上器具(SGA:supraglottic airway)は、喉頭の入口をふさぐようにフィットさせて気道を保つ器具です。ラリンジアルマスク(LMA)や i-gel が代表で、気管挿管より導入が速く、循環変動や咽頭の刺激が少なく、覚醒もスムーズです。仰臥位で、誤嚥リスクが低く、短〜中時間の手術で広く使われます。

一方で、確実な誤嚥防止はできず、高い気道内圧をかけるとシール部から漏れます。適応と限界を知って使うことが安全につながります。この記事では、声門上器具の種類、挿入の流れ、カフ圧管理、そして臨床工学技士(CE)が現場で確認するポイントを整理します。手技と適応判断は麻酔科医が行うものであり、本記事は機器に関わる立場からの整理です。

ポイント

  • 世代で分ける:第1世代は気道確保のみ、第2世代は胃管ポート付きで誤嚥・胃膨満に配慮
  • 適応は「仰臥位・短〜中時間・誤嚥リスクが低い・高い気道内圧を要さない」
  • カフ圧は上げすぎない。目安として60cmH2O以下。カフ圧計で管理する
  • 装着直後は「カプノ波形・胸郭挙上・リーク音・気道内圧」で成否を確認する
  • 換気できない・漏れが大きいときは、入れ直し → 別サイズ/別機種 → 気管挿管へ

声門上器具とは

上気道の奥、喉頭の入口(声門)の周囲にカフやゲル状のカフレス構造をフィットさせ、その内側と気管とをつなぐ器具です。声帯を越えないため、挿管に比べて刺激が少なく、筋弛緩薬なしでも挿入できます。マスク換気と気管挿管の中間に位置づけられます。

声門上器具の例(左:一般的なタイプ/右:カフレス型)

写真: 声門上器具の例(左:一般的なタイプ/右:カフレス型)

世代と種類

第1世代

気道確保のみを目的とした基本型です。古典的なラリンジアルマスク(LMAクラシック相当)が該当します。胃内容の逆流に対する備えはありません。

第2世代

胃管(ドレーン)ポートを備え、胃内容や空気を逃がせる構造です。シール圧も高めに設計され、陽圧換気や、ある程度の逆流リスクがある症例でより安全に使えます。プロシール型、i-gel、スプリーム型などが該当します。

カフレス型(i-gel など)

熱可塑性エラストマーのカフレス構造が、体温で喉頭周囲になじんでシールします。カフの入れすぎによる粘膜圧迫が起こりにくく、挿入も速い一方、シールの個体差はあります。

挿管用(気道確保困難時の橋渡し)

内腔から気管チューブを通せる設計の製品があり、マスク換気も挿管も難しい場面での「橋渡し」に使われます。

声門上器具の実物。喉頭にフィットする背面のカフ形状

写真: 声門上器具の実物。喉頭にフィットする背面のカフ形状

適応と、慎重に考える場面

向いている – 仰臥位、短〜中時間 – 自発呼吸または軽度の陽圧換気 – 誤嚥リスクが低い(絶食が守られている、胃排出遅延がない)

慎重に考える/原則避ける – フルストマック、腸閉塞、妊娠後期、高度肥満、胃食道逆流が強い – 腹臥位・側臥位・強い頭低位 – 開腹操作、高い気道内圧が必要な病態(重症の肺コンプライアンス低下) – 長時間手術、気道への操作が加わる手術

挿入の流れとCEが見るところ

  1. 体格に合うサイズを選ぶ(体重帯で規定。迷えば大きめ→小さめの順で試す施設が多い)
  2. カフ付きは事前に空気を抜き、背面に潤滑剤を塗る
  3. 麻酔深度を十分にしてから、口蓋に沿わせて抵抗を感じるところまで挿入する
  4. カフ付きは規定量まで、またはカフ圧計で適正圧まで注入する
  5. 回路につなぎ、用手換気で確認する

CEは、サイズと在庫、カフの破れ・リーク、潤滑、カフ圧計の準備を担当します。挿入後は次の項目で成否を確認します。

装着後の確認 ― うまく入ったか

  • カプノ波形が正常な形で出る
  • 胸郭が左右対称に上がる
  • リーク音がない(口元・頸部で聴く)
  • 気道内圧が想定範囲(漏れると上がらない/急に高いと位置不良や喉頭蓋の巻き込み)
  • 第2世代なら胃管がスムーズに通る(食道入口に正しく位置している目安)

これらのどれかが満たされないときは、いったん深度を確認し、入れ直します。

カフ圧の管理

カフ圧が高いまま長時間置くと、咽頭・喉頭の粘膜が虚血し、術後の咽頭痛・嗄声・まれに神経障害につながります。目安として60cmH2O以下に管理し、亜酸化窒素を併用するとカフ内圧が上がるため、術中も定期的にカフ圧計で確認します。カフレス型でも、体温でなじむまでの初期はシールが甘いことがあります。

トラブルと対応

リークが大きい・換気量が入らない

深度不足、サイズ不適、位置のずれ、喉頭蓋の巻き込みが主因です。麻酔深度を確認し、いったん抜いて入れ直す、サイズを変える、別機種にする、の順で対応します。是正できなければ気管挿管に切り替えます。

気道内圧が急に上がる

位置のずれ、喉頭痙攣、分泌物、回路の屈曲を確認します。声門上器具では、深度が浅いと喉頭痙攣を起こしやすい点に注意します。

逆流・誤嚥が疑われる

ただちに患者を側臥位・頭低位にし、吸引します。第2世代なら胃管ポートから吸引します。以降は気管挿管での気道確保を検討します。

位置ずれ(体位変換・手術操作後)

固定の確認、カプノ波形とリーク音の再チェックを行います。頭頸部の手術では術者の操作でずれやすく、こまめな確認が要ります。

術後の咽頭痛・嗄声

多くはカフ圧の上げすぎと留置時間に関連します。適正カフ圧の管理が予防になります。

気管挿管への切り替え

声門上器具で管理を始めても、術中の状況変化(体位、手術範囲、換気不良、逆流)で気管挿管が必要になることがあります。切り替えの選択肢は、いったん抜いて通常挿管、ビデオ喉頭鏡、声門上器具を通したファイバー挿管などです。CEは、切り替え用の器具を「使う前に」手の届く場所にそろえておきます。

CEが確認すること(まとめの前に)

  • サイズと在庫、カフの点検、潤滑、カフ圧計
  • 装着後:カプノ・胸郭・リーク音・気道内圧・(第2世代は)胃管の通過
  • 術中:カフ圧の定期確認、体位変換後の再チェック
  • 予備手段:別サイズ・別機種、気管挿管一式、吸引、自己膨張バッグ

まとめ

  • 声門上器具は導入が速く低侵襲。仰臥位・短〜中時間・低誤嚥リスクが適応
  • 第2世代は胃管ポートがあり、陽圧換気や軽度の逆流リスクに配慮できる
  • カフ圧は60cmH2O以下を目安に、カフ圧計で管理する
  • 装着後は「カプノ・胸郭・リーク音・気道内圧」で成否を確認する
  • 換気不良が是正できなければ、ためらわず気管挿管へ

声門上器具は、CEが準備・確認・カフ圧管理で直接貢献できる領域です。装着後の所見からトラブルを引くには、周術期モニタリング トラブル対応リファレンスの「麻酔器・回路・気道」カテゴリも参照してください。この記事は周術期の気道管理デバイス 総まとめの一部です。